Y君は窮屈な世界で自分を解放できず、苦手なことを押し付けられ卑屈になっていたが
フィリピンに来て自分が解放でき、自分のマイナス点を笑いながらも明るく生きることができることに気がつきはじめました。
Y君の母親からはY君がフィリピンに来てから1週間ほどが過ぎた頃にこんなメールが来た
Yは学びと勉強の違いに気づいておらず(16歳ですもの、当たり前だと思います)狭い知識学習においての苦手意識から脱せない、自分には無理だという諦めの中を義務教育期間彷徨っていました。今基礎教育期間を迎え、ここからがYの本領発揮だと私達も準備してまいりました。
例えば、彼はあまり心に響かない(感情や思考が深くない)ので、注意、激励、反省、好意を無視しているように見受けられます。
また、体を動かす事に関してはある程度器用にこなしそこで満足してしまうので、頑張らない、不真面目と見られがちです。指導者からみれば体育会系通常の根性論が響かない上、期待からイライラを爆発される方が多いです。
文字が書けないわからない、説明が理解できないのを悟られないよう強がった態度になり作業を取り組まないため反抗的にうつります。
時系列の組立や予測が困難なので、時間にルーズ、団体行動に支障が出がちです。
ネガティブなことばかり書きましたが元々人懐こく心根はとても良い息子です。これらのマイナス面を無理強いしたことで彼は気持ちが閉じこもり卑屈な思考になりがち本来の自信を失わすことになってしまいました。マイナス面が彼の人間性の面白さに繋がるように彼自身が受け入れ笑い飛ばすことが出来ればと私達も試行錯誤している中において普通とは違う学生生活を送らせている次第です。
どうか、お腹立ちになることもあると思いますが、このようなADHDの特性を持っているということをご理解いただければ幸いです。
それなら彼のマイナス面も含め、
何かをここで感じて、つかんで行ってもらいたいと強く思う。
自信になることでも良いので、何かを
今わからなくても10年後、20年後に思い返して良かったなとか
あんなことがあったと思い返してその時悩んでいることの糧や、人生の岐路の手助けになればと願う
ドゥマゲッティ滞在残り二日、最後の二日間連続フリーダイビングトレーニング(スキンダイビング)
Y君は前回に引き続き大幅に遅刻してきた。理由は寝坊と、バスが予想以上に来なかったとのこと
最初の数日はちゃんと時間通り来ていたので、ここに来て気のゆるみが出たのか
全体的に悪い気の緩みが出てしまうと事故に繋がったり、良い結果にならないことも多いので、しめるところはしめないといけない。
何故遅れたのかを聞き、ちゃんと自覚を持ち目覚ましをかけて起きること、しっかり時間を計算、予測して早目にバスに乗ること
遅れるという行為でどれだけの人にどれだけの迷惑をかけてしまうかということをしっかり説明した。
ちゃんと説明をし、自分で認識、理解すると今までできていたのでやってみたが、次の日からは遅れなかった
自分の頭でしっかり理解し、やりたいと思えることであれば、やればできる
残り二日、一日目最初にできなかったプロコースのスキルを完成させる
前回できた3Mの水深にまずは挑戦
しかし、前回できたのに今回全然できない
何度もトライするができない、、、
別のトレーニングをさせ、じょじょに水深を深くしていき、厳しくしていく
20代前半のTにもトレーニングに参加させ、彼と競わせる、自分の良さと悪さを反面教師からや他と比較させ考えさせる
Y君にもTに教えさせ、どうやったらよりスムーズに無駄なく潜れるのか気付かさせる
自分は他の人よりもできるのだと自信をつけさせる
再びプロコースのスキル3Mに挑戦
思いがけず簡単にできた
これが自信になったのか、嬉しかったのか
5Mに挑戦、戸惑いと恐怖からか最初はできなかったが、「3Mできたし、これだけのトレーニングできたんだから
できるでしょ!」っと気合を入れたら、本人拍子抜けするぐらい簡単にできた
「なんだできるじゃんかーー!」 「これプロコースでやることだよ、凄いじゃんか、できると自分で思ってた??」
と聞いたら、「良く考えてなかった(笑)」と、できるの自体すごいことだ
最終日、正直プロコースのスキル5M達成できると思っていなかったので、やることがなくなってしまったので
急遽より高い目標へ
「Y君スキンダイブ何メートルまで行ったことある?」と以前聞いた時に17Mと言っていたので、水深20Mに挑戦させることにした
「三宅島でイルカと潜った時にイルカと一緒に潜って気がついたら17Mまで行っていました」と本人言っていたが、とっさのことでダイビングコンピューターを見てしかもその水深が17Mという細かい数字まで覚えていたので、これはY君の中でけっこう重要なことだな、この17Mをもし越えられたら彼にとってけっこう大きいこと。と思い当たり挑戦させることにした
しかし皆さん水深20Mって相当難しいですよ
普通の人は水深5M潜るだけでも難しいです、ましてや20Mなんて5Mの10倍以上は難しく、ダイビングのプロでもそこまで潜れる人なかなかいません。(NAUIのプロコースの目標水深でも10Mです、PADIはやらないと思います)
それだけ難しい水深20Mの壁
「20Mまで行けたら焼肉おごってやる」とはっぱをかけて、さらに今日は午前中で終わらせて早く焼肉食べに行くぞ
その後飲むぞっと、タイムリミットも設けた(しかし20Mまで行ける確率は正直五分五分かそれより低いと思っていた)
まずはトレーニングをし、じょじょに水深を深くしていく
しかしどうしても15Mの壁が破れない
全く違うトレーニングを組み合わせつつ、根気よく繰り返し、10M前後を潜り身体を慣らさせる
トレーニング中巨大な海がめが出て来たり、クラゲが発生したり、いろいろ邪魔が入ってくる
そしてそろそろ行けるだろう、流れも出て来たし、クラゲも出てきたので状況は悪化していくばかりだし
ここで決めないと後は難しい、午後に持ち越すかの勝負所だった
一回目挑戦、11M、2回目10M
3回目けっこう行ったと思ったが14M
うーーんやはり難しいかーーーっと思っていたが、本人冷静というかあまり考えていない、、、
周りのクラゲを気にしているし、潜ることに集中していないようなので
「集中しろ!行くぞ!!」とはっぱをかけて、いざ挑戦
うーーんまたダメかなーっと思っていたが、グイグイ潜って行く
いざ潜るとあせって、無駄な動きや、どんどん潜ろうとバタバタしていたが、今回は違った
途中から今まで練習でやっていたように落ち着きを取り戻し、フィンキックの数が極端に少なくなり、マイナス浮力だけで下まで行こうとする余裕が出ていた。 そのままスーーーっと水に溶け込み、水底をタッチし見事水深20M達成
上がってくるときは必死だったが、見事午前中のうちに水深20Mに到達した
(その時の様子は動画で、一緒に潜って動画を撮った僕も大変でした)
みんなガッツポーズ!
さあ帰って焼肉食べようと、家路に着く
帰る途中「20Mまで行けると思ってた??」と聞くと
「あんまり考えてなかった(笑)」との答えが
それでもここ9日間ダイビングもフリーダイビングもやって一番楽しかったのっていつ??
と聞くと「今日!!今日が楽しかった」と意外な答えが
何故??と聞くと「20M達成できたから!!達成感が楽しかった!!」との答え
おーー意外に感動してたんだー、Y君にとって相当大きなことだったんだなと改めて感じた
焼肉を食べ、過ぎ去りし日の思い出をみんなで語り合った
やっぱり大きな目標がありそれを乗り越えて行き、最後に大きな目標を達成する、達成感は彼にとっての自信になり、大きな出来事だったようだ。
翌日Y君は日本に帰国した
帰国する直前うちに器材を取りに来て最後の挨拶をした
「お世話になりました、ありがとうございました!!また来ます!!」
「うん待ってるよ、20M達成できたこと忘れるなよ、頑張れよ!!」
不愛想で無口だったヤンキーは、笑顔で爽やかなちょっと成長した大人の少年になっていた
後日Y君の母親に書いたメール
Y君は自分の興味がある、面白いと感じること
当たり前ですが、自分が注目されること、自分を大切にしてくれるところにはすごくパワーを発揮するので
そういう分野や物事に導いてあげるのが良いかと思います
僕の勝手な意見なのですが、良いところも足りないところも補って、平均的にする日本の教育よりも
良いところをとことん伸ばし、興味があること、好きなことを突き進んで行く方がY君には良いのかなと思っています。
足りないところ、不得意、できないところは後からでも本当に好きなことや興味があることをやり続けていれば必ず壁にぶつかり
自分で何とか乗り越えるかと思います。
今回のナビゲーション時の計算のように重要にみえて、あまり重要ではないこともあるかもしれませんし
その不得意さを吹き飛ばすほどの強烈な個性や得意分野を持てば良いかと思います
その後彼は高校卒業認定試験に受かり、学校が落ち着いたら今冬またこっちに戻って来ると言う
素直な人は伸びる、素直でやる気があれば何だってできる
誰にだってできる
余計なことは考えず、やってみる
素直に人の話を聞き、とにかくやってみる
人間の可能性について素直に素晴らしいと感じた
障害って何?障害って言われているモノって何?
人の評価って何? どう人を見て、どう評価しちゃってるんだろう??
っと感じ、僕自身もすごく勉強になりました
個性はみんな持っていて、それが小さいか大きいか、人それぞれ違うのであって
その人がやりたいこと、好きなことにより小さい大きい、違いをうまく活用できる世の中であればいいのに、そういうことを教えるのが本当の教育ではないのか?
Y君のようにありつづけられれば、自分もまだまだ素直で純粋でいよう
まだまだできる,まだまだやりたいことが沢山ある
どの自分の個性を活かしていくか、どの個性をこれから学び伸ばせるか
本当に楽しみだ
まだまだ終わらない
16歳の少年のように
人生で最高の時は過去にあるのではない、未来にあるのだ
The Best things are never in the past, but in the future